世界の印刷技術動向


木下堯博

The Development of World Printing Technology
International Graphic Arts & Printing University


Akihiro KINOSHITA

Abstract
As for the invention of Gutenberg printing type and press, the giving communication will be first World Wide Web which was made abundant in the wisdom to the human society.
That movable metal type ( the mobile formula metal character, the printing type ) expresses all meanings of this sentences in the combination doesn't change at all with Personal Computer in the information times today.
The meeting which commemorates of Gutenberg 600 of his birth from January, 2000 in German each place was held ,but a publishing cost was mainly downed for compared with the invented price at first.
At present, it is available at the for free near cost in the Internet.
The shipment sum of the print tends to increase steady every year but the shipment sum in the developing country is remarkable especially.
This will show a book and a newspaper worldwide and the demand of the magazine will show to increase in spite of the distribution on the Internet.
The author predicted that the amount of shipment of Graphic Arts Industry in Japan for 21st century becomes from \ 9.1 trillion to \ 10 trillion in 2000 year by a approximation analysis.
There is that the information capital investment of the graphic arts industry is remarkable. It is expected that the development into the new information industry from the graphic arts industry is carried out with the conventional and digital technology. and the advanced utilization develops new business by the large-volume transmission and so on.
The research of the graphic arts theory must be more promoted for its purpose.


1, はじめに

 1997年7月にタイランドで始まったアジアの通貨危機は2000年8月現在、約3年を経過した。
 アメリカの景気は緩やかな拡大傾向にあり,第2次大戦後の高記録である。
 この要因はIT(情報技術)革新により,あらゆる産業分野で生産性が高まる傾向にあると思われる。
一方、ヨーロッパでは1999年にEU加盟国のうち,11ヶ国が単一通貨のEUROを発行し,経済統合を目指している。
2002年にはEURO通貨が誕生し,ドイツのマルクやフランスのフランなどは消減する。
しかし、デンマークは2000年10月この統一通貨に不参加となった。
このEU経済圏は人口2.9億人、GDP約8.0兆ドル(1997)となる。
アメリカは人口2.7億人,GDP約7.8兆ドルであり,日本は人口1.26億人でGDPは約4.1兆ドルとなった。このことにより三大経済圏が地球上に誕生する。
これに対して,世界の印刷物総出荷額は1996年で約31.2兆円,1987年の約25.79兆円から5.41兆円も増大している。
アメリカは世界の印刷物総出荷額(1996年調べ)の31%を出荷しているが,ヨーロッパ全体では34%となった。(表1)
日本は1996年に印刷の世界全出荷額の19%となり、世界的には東南アジアの出荷額が伸び率の高いことが分かる。
しかし,前述の数値はバブル崩壊前であるので比較するには当てはまらないかもしれない。
一般論で言うと,アジア地域は印刷物の需要が高いことが言える。
これらの印刷物需要をまかなうハイエンドプリプレスとプレス装置産業の世界の総出荷額は,約19兆円(1999年)となった。
そのマーケット比はドイツが34%,アメリカ19%、日本が7%となった。ドイツが高い比率を維持している。(表2)
このような経済状況の中でdrupa2000が2000年5月18日〜31日までデュッセルドルフ市で開催された。
引き続き2000年6月1日からドイツのハノーバーで万国博が開かれている。
Gutenberg生誕の地のマインツ市でdrupa2000協賛行事として2000年12月までGutenberg600(1400〜2000)が催されている。
著者は,上記の行事に参加し,デジタル対応印刷技術などの調査研究を発表し,世界の印刷文化遺産のテーマなどを討論して来た。(1)
以上の経過をふまえて,著者は日本及び世界の印刷文化と印刷技術の発展に関し報告する。


2、出版印刷文化に関する研究

2−1 人類史上最大の発明
2000年を迎えるにあたり今日まで人類社会に貢献してきた最も偉大な発明は何か?
この事に関するアンケート調査がアメリカで行われた。
Edgeによればこの調査の第1位はグーテンベルグの活字と印刷機械であつた。
著者はこの印刷分野を44年間にわたり研究し、次の6つの柱を立てて研究して来た。(2)

(1) 印刷画像史
ここでは日本最古の印刷物の百万塔陀羅尼経、天草版、本木昌造、木村嘉平、マルコ・ドロ神父などのそれぞれ印刷分野の先駆的仕事を行ってきた人物を中心に研究を進めてきた。
グーテンベルグの印刷の発明は1591年に日本にも伝来し、天草版(キリシタン版)を生み出した。1865年に本木昌造は活版印刷の基礎を生み出し、日本の近代印刷の開祖となった。

(2) 印刷教育論
日本の印刷教育は美術から分化し、中等教育や高等教育で行われてきた。
印刷教育は職業訓練的要素が強く、高等教育の分野では十分定着して来なかった。
デジタル時代を迎えるにあたり、この印刷教育はDTPなどの新しい分野を導入し、再構築を計ることが急務となって来た。
印刷教育の問題解決の一つの方法としては産学協同がある。日本ではこの産学協同はあまり定着していないが、台北市の世新大学はこの産学協同を実践している。この大学は建物の1,2階がプレス、プリプレスの工場になっていて、3、4階が研究室と講義室になっ ている。まさに、この大学は産学協同により印刷の教育と研究が成立っている。

(3) 画像再現論
著者は大学卒業後、オフセット印刷の調子再現や色再現に関し研究を継続して来た。
さらにこの研究は高精彩印刷の研究に発展した。
ISOに準拠したJapan Color Print97が日本印刷学会より刊行されると、これを中心として各種印刷画像を比較研究した。
スクリーン印刷分野では、著者はプラズマデスプレー(PDP)のリブ形成に関する研究を行った。スクリーン印刷は版が他の版式に比較して柔らかいので繰り返し印刷の精度が低いことが知られている。これを解消するため擬似印刷を行った。この方法で印刷の 繰り返し精度は42インチで版面のサイズを0.4μ以下に抑えることが出来た。

(4) コンピュータ処理論
著者はこの分野の研究を1976年から始めてから論文と作品制作をおこなった。
さらに著者はComputer Electronic Prepress System(CEPS)の活用、データベースの活用などへと研究が発展した。
ユネスコ活動の一環として印刷文化遺産のデータベース化を構築し、電気通信普及財団の研究論文集にそれらの成果を発表した。
また、著者は近年の進歩発展の著しいオンデマンド印刷やComputer to Plate(CTP)に関してそれぞれ著書をまとめた。
入力デバイスはスキャナーからデジタルカメラへと進展し、出力デバイスはフイルムからPS版へ、さらに直接的に紙へと印刷するシステムへと一層ダイレクト化が進んだ。

(5) 画像コミュニケーション論
この研究は印刷画像と人間との関わりを考察する分野である。その内容は画像評価のファージー推論、文字印刷画像の可読性、感性データベースなどがある。
その基本は物理的評価と心理的評価とを一体化させ、因子分析などによりヒューマンファクターを算出することにある。
これらの研究成果は新しい印刷画像設計の基本となる。
特に、日本では高齢化が進み、高齢者への文字の可読性が問題となって来た。
著者は各社の文字フォントを利用し、可読性を調査した。
その結果、明朝体は横線幅(A)と縦線幅(B)の比(A/B)が0.61以上になると良好の可読性が得られた。
一方、近年登場してきたサーマルCTPは網点の解像性が良いので、モワレの発生確率が高い。そのため、これらを解消するための新しい研究を行っている。
このような画像コミュニケーション論は人間にとって優しい印刷画像設計を可能にする研究とした。

(6) 21世紀の画像情報
地球上の人口は60億人を超え、その限界値が食料供給などから求められている。
1996年の世界の印刷物出荷額は約31.2兆円となった。
7大陸別では、ヨーロッパが10.6兆円、アメリカ・カナダが9.7兆円、アジアが8.1兆円となった。
日本はこのアジアのうち6兆円を出荷している。
このデータは1987年の出荷額と比較すると、ヨーロッパとアメリカが減少し、アジアが増大している。(表1)
しかし、日本の印刷産業の出荷額はバブルの崩壊により1992年から1994年まで前年度比が減少した。しかし、1995年から緩やかな上昇を展開している。
1998年のデータでは印刷産業の出荷額は前年比.1.4%減少した。
印刷産業は東京、大阪、埼玉の大都市中心で発展してきたが、デジタル化の進展とIT革命により中小都市への分散が始まっている。
著者は2020年までのこれらの出荷額の推定と印刷の分散化などをテーマとして研究している。
著者はこの6つの分野の研究に関し約770編の論文をまとめてきた。
これらの研究は2000年4月に開講した新しいウエブ大学である国際印刷大学の各学科に継承され、研究と教育が展開されている。(3)

2−2 グーテンベルグ生誕600年
グーテンベルグの誕生が1400年頃であるため、グーテンベルグの生地マインツ市ではグーテンベルグ(1400〜2000)600年祭の行事が市内13ヶ所(マインツ大学、グーテンベルグ博物館、自然歴史博物館、ドーム教会博物館、グーテンベルグパピリオンなど)で2000年1月から開催されていた。ここではグーテンベルグに関する特別展示や体験学習を行っていて、学童から老人層までこのお祭りに参加し楽しむことが出来る。
特に、グーテンベルグ博物館はグーテンベルグの展示を中心とした特別展となり、長期にわたり改修して新しく4階に小劇場を設けた。ここではグーテンベルグの誕生から印刷の発明に至る経過をコミカルなマリオネットで演出し、見学をしていた小学生は笑いころげていた。
また、グーテンベルグパビリオンでは、コンピータ利用とインキの色合せなどを行っていて印刷に関する基礎的学習を小学生の課外授業の一環として対応していた。
ドイツのグーテンベルグの研究はマインツ大学のフーセル教授やグーテンベルグ博物館のベンツ館長らにより行なわれていて、1997年 韓国で開催のユネスコ主催の国際シンポジウム“International Symposium on the Printing History in East & West” では、両氏が参加した。このSymposiumでは将来へむけて印刷関連のドキュメント遺産の保存を広く各国に依頼した。(4)
日本の印刷文化遺産に関しては、著者らがデータベース化の作業などを行った。
著者は
[1]世界遺産とドキュメント
[2]印刷文化遺産
[3]データベース化
などを柱として,研究調査報告書をまとめた。このことに関しては第5章コンピュータ処理で詳しく述べる。
 −方、中国と韓国の印刷術の発明は、グーテンベルグの発明より約200年前に遡り、中国ではピーゼンにより陶製活字が作られた。この活字製作と印刷術は東西交流によりヨーロッパに伝播したのではないかと考えられよう。
  韓国清州市で印刷出版Expo2000が開催されるがそれを記念して第3回清州国際印刷出版文化シンポジウムが2000年10月12日から開催された。
著者は“The Development Modern Japanese Printing Technology”を発表した。それをもとに本論をまとめた。
世界各地ではキリスト生誕2000年のため印刷出版文化の研究発表がくりひろげられている。
ドイツでの印刷博物館は過去の資料を今日のデジタル対応と結びつけ、一般大衆にも理解できるような解説を中心に、社会教育の一環として展示されていた。
日本でも凸版印刷が印刷博物館を2000年10月7日に東京で開館した。

2-3 近代印刷のあゆみ
 日本における近代印刷の発展は長崎から始まった。この近代印刷はオランダ通詞の本木昌造により確立された。本木昌造は1824年(文政7年)北島三弥太の四男として,長崎に生まれ,12歳のとき,母方である本家の本木昌左衛門の養子となる。彼は1848年に長崎入航のオランダ船から1台の印刷機械と活字一式を購入した。
 彼はこれらを見本として和文活字(邦字活字)を作るため工夫と努力を重ねた。本木昌造はウィリアムガンブル(宣教師兼印刷技術士)の指導により,電胎母型の製造に着手した。
 その活字は明朝体2号活字であり,初めて国産の活字鋳造に成功した。
 本木昌造は印刷機の研究をはじめてから、22年間を費やし活字印刷の基礎を築いた。
 江戸末期から明治に移る時代にあって,長崎はオランダ及び西欧文化の窓口であり,素早く先進文明を吸収できる位置にあった。
一方,1798年,ドイツ人アロイスゼネフェルダーによって発明された石版印刷技術はフランス人のド・ロ神父によりもたらされた。邦字,日本語の複雑さは活字よりも筆記体の方では石版印刷が適している。
先輩宣教師プチジャン神父はこの石版印刷の導入を目的としてド・ロ神父を日本に招聘した。日本行きが決定すると彼はフランスで印刷工場に勤め,石版印刷を修得した。
 1868年には聖教日課を印刷するが木版であった。その後、彼は石版材料が入手できるようになり,キリシタン農業カレンダーを刷っている。これは日本最初の石版印刷物である。
ド・ロ神父は1877年までに刊行した宗教書は40冊以上に及び大半は石版印刷であった。
 日本の近代印刷は本木昌造の活字印刷が発展するにつれ,石版から活版へと移行していった。
 かくして、本木昌造による金属活字による活版印刷は日本の近代化が一番に要求したもので,凸版、平版、凹版の3版式が確立していった。(5)
なお、本木昌造の木製活字は長崎の諏訪神社に保存されていたが、3291本中、500本を復元するとの計画が進んでいる。これは約120年を経過した資料として貴重な遺産である。


3,日本の印刷産業

3−1日本の経済社会
日本の人口は2000年3月現在、1億2607万人と前年比0.17%増加している。
この増加率は減少傾向にある。しかし、この人口は2007年をピークに減少して行くことが推定されている。また、65歳以上の高齢者は1998年には16.2%となり2007年には20%を越える高齢化社会にはいる。(表3)(表3図)(6)
1998年全産業の就業者人口は6514万人となり、第1次産業は5.3%、第2次産業は31.6%、第3次産業は62.8%と第3次産業の伸び率が高い。
1998年の国内総生産(GDP)は約497兆円となり前年比マイナスとなった。
このGDPは1997年まで前年比プラスの成長をして来た。(表4)
印刷産業はGDPと共に成長してきたが、1998年のGDPの前年比マイナスにより印刷産業の成長がマイナスになると予想されている。
新聞発行部数は5367万部/年となり前年比が0.2%減少していることからも推定されよう。
また、広告費の総額は1997年の5兆9901億円から1998年には5兆7597億円と減少している。(図1)
これらの要因は印刷産業の出荷額を減少させる要因となろう。
最近の工業統計表により印刷産業は1998年の出荷額が8兆7482億円となり前年比マイナス1.4%となった。

3−2 印刷産業
日本の製造業は22の業種に分かれていて、そのうちの一つに出版・印刷・同関連産業がある。1997年のその出荷額は13.981 trillion yenとなつた。
全製造業の出荷額は約326.515 trillion yenであるので製造業全体の4.3%を出荷していて8位の位置を占めている。(図2)
印刷産業は出版・印刷・同関連産業のうち、印刷業、製版業、製本業、加工業、印刷に伴うサービス業が含まれる。印刷産業は出版・印刷・同関連産業のうち約64%を出荷しているので約8.928 trillion yenとなる。
この印刷産業は1985年から1991年まで年7%の成長を続けてきている。
しかし、この産業は1992年から1994年までの出荷額は前年比マイナスであった。
最近、印刷産業は1995年から1997年まで2〜3.5%の成長を続けている。(図3)
1998年の印刷産業の企業数は4万3693社、従業員数は463,620人となり、一人あたりの出荷額は188million yenとなった。
このうち印刷業は208 million yen、製版業126million yen、製本加工業106million yen、印刷に伴うサービス業は111million yenとなった。
日本の印刷産業のうち1企業あたりの出荷額は印刷業が最も高くなった。
この印刷業は多くの高額の機械を導入し装置産業であると同時に生産性をあげていることが解った。
参考までに新聞業は2、346million yen、出版業は944million yenとなった。

3−3 印刷業と製版業
印刷産業のうち中心を占める印刷業は86.4%の7,515.4billion yenを出荷している。製版業は701 billion yenで印刷産業の全出荷額の約8%程度である。
日本の製版業が印刷業の下請け的存在であるため、印刷業が社内にプリプレス分野を内製化した事により製版業の出荷額が低下して来た。
このプリプレス分野はフルデジタル化が進むとネットワークとワークフローの構築が不可欠となってくる。
また、クライアントがデジタルデータにより入稿することにより、生産ラインもこれに対応せざるを得ない状況にある。
DTP,CTP,DDCPオンデマンド印刷などのデジタル分野の発展は印刷画像の品質が少し低下したものの印刷業の一分野として内製化が一層、進んできた。
日本ではかってCEPSの導入率が高く製版業が特殊の技術力で高品質の画像製作を行ってきた。
しかし、今日の景気の低迷により、高品質印刷画像の必要性が少なくなって来ている。
従って、高い技術力を持っていた製版業は新しいデジタル化の技術により内製化して来た印刷業に仕事量が流れ減少したことになろう。
印刷産業はかって不況業種に指定されるなど幾多の困難を乗り越えてきた。
この不況期を乗り越えるために東京都がまとめた振興策は3つの柱がある。
1、ネットワーク化  2、新しい企業創設  3、現企業の強化
などである。
しかし最も基本的なことは人材育成とデジタル化の整備であろう。(7)
これらには国際印刷大学校も大いに協力している。


4、コンピュータ処理

4−1、印刷文化遺産のデータベース化
著者は人類の足跡を次世代に継承するために古印刷文化資料のデータベースの製作を行って来た。
ユネスコの世界遺産のなかで印刷関連の資料は9件あることがわかった。
主としてこれらはヨーロッパに点在していて、この地域の歴史の深さを実感した。
9件はつぎの通りである。
(1) アルタの岩絵(ノルウエー)、(2)アルタミラの洞窟(スペイン)、(2) カモニカの岩絵(イタリア)、(4)イエルング墳墓、ルーン文字石碑と教会(デンマーク)、(5)セビリア大聖堂、アルカサルとインヂィアス古文書館(スペイン)、(6)古代都市シギリア(スリランカ)、(7)スピシェスキー城とその周辺の文化財(スロバキア)、(8)八万大蔵経の納められた伽耶山の海印寺(韓国)、(9)レンガ造りの板紙工場(フィンランド)
更に、著者が日本で入手出来る印刷文化資料をデータベース化した。
これらはつぎの6件に集約した。
(1) 百万塔陀羅尼経(日本)(写真1)、(2)無垢浄光大陀羅尼経(韓国)、(3)佛祖直指心体要節(下巻)(韓国)、(4)グーテンベルグ42行聖書、(5)キリシタン版(日本)、(6) 本木昌造
画像データベースは大容量のデータを保存し、効率良く必要とする画像を迅速に選択し、出力しなければならない。
このデータベースはメインメニューとサブメニューを次のように整理した。
(1)分類A世界遺産、B印刷文化遺産、Cその他
(2)年代A紀元前、B紀元770年前、C紀元1455年前、D紀元1620年前、E紀元1875年前、F紀元2000年以前、
(3)区分A描画、B印刷、Cその他
(4)素材A石、B木、C文献、Dその他
(5)製法A手工的、B機械的、Cその他
メインメンメニューの(1)分類はA世界遺産のドキュメントとB印刷文化遺産とに区分した。(2)の年代はA紀元前とB百万塔陀羅尼経製作の770年以前とした。
Cの1455年はグーテンベルグの印刷発明以前とした。
Dの1620はキリシタン版製作以前とした。
Eの1875年は本木昌造の命日以前を目途とした。
このようにこのデータベースはメインメニューの5項目(1)〜(5)に対して、サブメニューは3〜5段階に区分した。
検索方法はメインメニューとサブメニューさらに名称による検索を連動させた。
これにより画像が検索されると関連の文献や画像がn枚の画像が表示され、その中から必要とする画像を検索する。(8)(図4)

4−2異版解析
それぞれ出力した画像は異版解析にも利用される。1591年に刊行されたキリシタン版の「ばうちずもの授けよう」はローマ字でなくひらかなで印刷されている。これらのひらがなの内、良く利用される文字「う」「し」「の」の3文字をそれぞれ10ヶ所選択し、拡大デジタル化をした。それぞれの面積を求めたところ3〜5%の誤差があった。
このことは一つの母型から金属活字を鋳造して利用したものと解釈した。
木活字の場合はばらつきが大きくこのような精度を保つことは困難であろう。
従って、1591年の天正遣欧使節団が長崎に持ち帰ってきた印刷技術は和文の鋳造技術を併せ持ち、金属活字により印刷が行われたものであろう。

4−3 文字印刷の可読性

(1)可読性
可読性に関する研究は著者の研究の6分野では画像コミュニケーション論に分類される。
2000年4月1日に開学した国際印刷大學校(http://www.media-lin.or.jp/igu)は二つの学部(グラフィツクアーツ学部とコミュニケーション学部)から構成されている。コミュニケーション学部には3学科(コンピュータ処理学科、画像コミュニケーション学科、印刷未来学科)が設置された。この画像コミュニケーション学科の中の画像評価論という学科目に可読性の分野が含まれている。
 著者の可読性の研究は1956年10月の第12回全国印刷人緑友会熊本大会での発表から始まつた。
可読性(readability)は、文字印刷画像の読み易さにあり 眼にやさしく,正確に速く読め、理解できることにある。そのためには、書体や文字のサイズ,編集のあり方などさまざまな要素が加味されてくる。
 文字表現は,紀元前2000年頃から始まりメソポタミアの粘土板や楔形文字などの記録文章からその美しさが伝統的に受け継がれて来た。1445年、グーテンべルグ(本年はグーテンべルグ生誕600年祭がマインツを中心に開催)は手書きの42行聖書を活字で印刷再現した。この活版時代は歴史が長く可読性の研究は今井直一らの他、多くの研究者により行われた。
しかし、活字から写真植字、電算写植、ワープロ、コンピュータと目まぐるしく文字組版が変化してきたが、その基本は印刷画像の可読性であり、人間とのコミュニケーションが研究の対象になっている。
本論では今日までの可読性に関する主な研究をまとめ、将来の指針とした。

(2)オフセット印刷画像の可読性の研究
文字印刷画像の可読性に関する研究は1990年から1993年までに画像情報技術誌に第1報から第5報までを報告してきた。その内の第3報では電算写植メーカ12社に可読性サンプルを依頼した。主たる内容は明朝体で横組、縦組(272文字)A4サイズ、10ポイト,行間7.5ポイントであった。
印画紙出力分はオフセット印刷し、それを96名の観察者によりSD法の5段階により評価した。
可読性のサンプルはアート紙、上質紙、書籍用紙にそれぞれ1000枚印刷し、安定した部分を抜き取り評価用とした。A社からL社までの12社の結果を表5(抜粋)に示した。表の面積率はこの文章に多く用いられていた情報の「情」の文字の画像部の面積をCCDカメラで撮影し、画像処理したものである。
アート紙の印刷画像では面積率の平均値の付近で可読性が良くなり、上質紙ではこの面積率が大きい程、可読性が良好となった。
H社の場合がアート紙,上質紙、書籍用紙、さらに横・縦組のいずれの場合も1位となった。このH社は印字密度1016dpi、ベクトルフォントのモトヤL明朝2の書体であった。(9)(表5)

(3)高齢化社会と可読性
日本に於ける65歳以上の高齢者が人口に占める割合が年々増加し、1995年14.5%であったのが2000年では17.5%、2020年には26.5%になると予想されている。
一般に加齢にともない老人性縮瞳と水晶体の透過率の減少により網膜照度の低下をもたらす。このような高齢化社会を迎えるにあたり文字メディアの可読性が大きくクロズアップされて来た。
従って、新聞のTV番組欄はいち早く文字を大きくして対応した。
著者の新聞社説の可読性調査では文字の高さと幅を1.00にしていくことと、文字の線幅比の縦・横線をゴシック体に限りなく接近させるようなフォントデザインが望ましいことがわかった。
一方、モニター上の文字の可読性については100文字の明朝体で12Pt・14Ptで調査した。紙面上の印刷画像に比較して行間アキは狭い方が可読性に優れていた。
このことは反射物と透過物の肉眼の順応性、白色部の輝度にも大きく依存していることがわかった。
文字組版は単なる情報伝達手段として用いる場合と永年保存される書籍刊行物として利用される場合とがある。
インターネット時代前者の割合が増大し、文字フォントライブラリーからダウンロードすることが可能になった。デジタル化に伴いCTP,オンデマンド印刷が増大していく時代に文字印刷の基本となる可読性の良好な文字デザインが一層重要になってこよう。


5、最新の印刷技術

5−1 drupa2000
今回のdrupa2000はデジタルメデイアを中心として印刷及び関連分野の品質が向上し、機械の速度が速くなり、価格が比較的安価になつたことに特徴があろう。(写真2)
従って、QSC(Quality,Speed、Cost)と名付けてみた。(図5)
これらをサポートするシステムはデジタル化が拡大し、一層、機能化が進み通信からデザイン、プリプレス、プレス、デリバリーへと連動し、Work Flowが整備されたと言えよう。将来的課題としての技術的興味はプレートレス(版なし)、インキジェツト印刷の品質改良と高速化(デジタル印刷)、ドット-コム(通信)などが考えられる。drupa2000での展示面積別ではHeidelberg、MAN-Roland, Xeroxの順となり、特に6号館(Print City)ではMAN-RolandとAgfaが中心となり60社以上の企業が相互に協力しあいデザイン、プリプレス、プレス,製本加工、出版などの一連のネツト構築を行い、各社がネット構築し実演するショウがみられた。ここでは毎日、16ページのドイツ語の新聞を発行していてMAN-Roland, Agfa, Adobe, Schur Packaging System各社が中心となって製作していた。このような連合はデジタル社会であればこそ成立する。
ヨーロッパではEC(欧州連合)のように15ヶ国が一体となり経済運営をし11ヶ国が通貨EUROを発行する。この連合や合併は相互に長所を取り入れ1+1=2ではなく、倍の=4以上になるメリットもある。従来の工業社会では主として線形成長であった。しかし今日の情報社会では対数尺での成長も見込まれよう。
更に、もう一つの特徴としては電子印刷系のXerox社の印刷界への参入であり、ネットワーク、データベースを活用した印刷出版がみられた。また、Xerox社はペーストインキの利用による印刷でAdast社のPAX−DIを展示しトナー系と合わせて18ホールで展開された。
これにたいしてHeidelberg社はKodak社と提携し電子印刷系のNexPress2100を特設の会場でデモンストレーションを行った。(写真3)
従来の印刷機械メーカーがこのような電子印刷機を投入した事例は三菱重工の電子印刷機MD300がある。この件に関しては7月28日の日本印刷学会中部支部の講演会でオンデマンド印刷のテーマとして名城大学で発表があった。三菱重工ではオンデマンドデジタル印刷の基礎的な研究が行われていることが解った。これらはデジタル印刷の市場が世界的に拡大していることに対応したものであり、Indigo, Xeikon, Canon, Xerox, Tr-System各社が躍進していることでも証明されよう。(図6)
ちなみに(1)American Speedy Printing Centers,(2)KinKo's Internationalの売上が急増し、単なるコピー屋からSOHO,アウトソ−シング関連の仕事が多いとの報告もある。
一方、印刷機械メーカーではDI(Direct Imaging)装置を搭載してきた。主としてPressTek社と Creo-Scitex社(Square Dot方式)の描画装置を使用している。しかし、機上描画製版は印刷する時間を製版に費やすため印刷生産性が問題となろう。又,機械の値段もこの搭載により上昇していくであろう。そのため将来的にはスイチャブル方式(光又は熱応答)のシリンダーとしてプレートレスへ対応して行くことが必要であろう。
最近、CTPはThermal方式からViolet方式へ更にUV方式へと変遷しようとしている。
しかし、Thermal Plateは大幅に改良が進みプレヒート不要のネガタイプ、現像レス方式などが期待される。Violet Laser対応セツターはEsher-Grad社のCobalt 8の他5社から出展していて、利用されていたプレートはAgfa, KPG, 三菱化学各社であつた。
UV方式は従来のPS版が利用出来ることで期待されていたがbays Print社UV-SetterとPurup-Eskofot社のDICONの2社で1350*1700mmの大サイズはこれからというところである。
デザインからプリプレス、プレス、製本加工、デリバリーにいたる一連のワークフローはPDFを中心としたPJTF(Portable Job Ticket Format)とCIP−3 PPF(Print Production Format)とが一体となってJDF(Job Definition Format)として新しく登場するであろう。
これらは通信、インターネットにより対応可能となるであろう。この分野ではVio,Wam-Net, myfujifilm.comなど11社以上のネットソフトが出展されe-commerceによるビジネスの展開が始まろうとしている。
しかし、日本ではA社が独自の回線を構築し、データベースとを組み合わせて事業展開すし、従来よりも安価な価格で印刷する方式を実旋している。

5−2 進展するデジタル印刷
今回の第12回のdrupa2000はデジタル印刷のオンパレードであった。
第11回の1995年のDRUPA95がCTPの始まりでもあったが、今日では世界的にCTPの導入が開始された。
従って、2000年以降、デジタル印刷が飛躍的に拡大していくことが予想される。
デジタル印刷機は有版方式と無版方式とがある。
前者は専用機械と兼用機械とがあり有版方式で解像度は2400〜3556dpiとペーストインキを利用しているため画像品質も良好である。
後者は無版方式の電子写真方式のためトナーを利用する。そのため解像度は400〜800dpiと低くなっている。しかし、この無版方式は可変情報を印刷することが出来、1枚ずつ異なった印刷画像を印刷することが可能である。
これらは印刷機械メーカー製版機械メーカーや事務機メ−カーから20機種以上も出品され、カラー方式と白黒方式が展示された。
いずれの場合もネットワークに直結した出力機となり、デジタル化時代に対応した機械と言えよう。
しかし、この方式はデジタルデータからの直接印刷であるので校正の問題が大きくクロズアップされる。
デジタルデータが印刷機械と直結していると、クライアントにたいする文字やカラー画像の校正のシステムを開発しなければならない。
つまり、リモートプルーフが登場するであろう。
そのためには通信とデスプレイの研究開発が必要となる。(10)
今回drupa2000で発表されたデジタル印刷機に関しては一覧表をスライドで報告する。

5−3 躍進する各国の印刷技術
ヨーロッパ各国の1998年の印刷出荷額は高い順にグループ別にすると第一グループはドイツを筆頭にフランス、イギリス、イタリアの順で国民一人あたりの出荷額は平均410DMとなった。
第二グループはスペインからベルギーまでの5ヶ国が含まれ、一人あたり平均559DM,第三グループはデンマークからフィンランドの4ヶ国で国民一人あたり603DMとなった。
第四グループは東欧3ヶ国(ポーランド、チェコ、ハンガリー)で一人あたり62DMと低かった。
これらのことから印刷出荷額の低い第三グループは一人あたりの出荷額が高くなった。
ヨーロッパ各国の1998年の国民一人あたり印刷出荷額は平均で358DMとなり、スイスの957DMを筆頭にポーランドの29DMまで格差は大きいが今回、ポーランドでみたグラビアの印刷物の品質は大変すばらしいもので印刷技術レベルの格差はあまり無いものと考えている。(表6)
ドイツ経済のGNPは3兆7194億DM(1998)と年々増大しているものの、その成長率(%)は徐々に減少してきていて、失業率が高くなっている。
貿易収支はGNPに比例して拡大傾向を示し、貿易収支とGNPとの相関係数は0.92とかなり高くなった。
ドイツ経済は主として自動車産業が牽引役を引きうけている。自動車分野の特許出願率でも米国を追い抜いている。(図7)
ドイツは印刷関連の特許出願件数もアメリカより多く、輸出に大いに貢献しているといえよう。
印刷機械輸出に対しては、海外の印刷従業員を指導する教育機関がフランクフルトにはPrint Promotion、アンデアーリスのハミューラスタジオなどがある。今年4月に開校したハイデルベルク社のプリント・メディア・アカデミーは企業内教育機関がある。シュットガルト大学のメディア学部はMAN-Rolandと産学協同体制を確立し、アメリカのRITはデジタル印刷の調査を開始した。
drupa展ではFograなど研究機関の展示の他にTAGA−VDDの合同研究発表会があった。イギリスでは国立のWest Herts Collegeの出展があり印刷及び同関連産業の人材育成や技術開発の一翼を担っている。
このように世界の印刷教育・研究機関はそれぞれの国の印刷技術や印刷文化の振興に貢献している。
印刷産業の将来に関して、printing誌の予測があるがクロスメディアの伸び率が高く従来のプリプレス、フォーム印刷は減少するとまとめている。(表7)
著者は2000年7月3日の釜慶大学校画像情報工学部(博士課程)でdrupa2000の報告を行った。ここでは多くの質問が出されインターネットの利用(表8)、カラーマネイジメントのソフト開発、PDPの研究レベルなど次世代へ向けてのチャレンジがあった。世界的の印刷文化と技術の進歩発展は来年2001年5月に中国の北京で開催される第7回国際印刷人会議、モスクワ印刷大学で世界印刷教育者会議、更にアメリカのシカゴで9月に開催されるPrint01などを契機に一層の進歩発展が期待される。


6.まとめ
 グーテンベルグの活字と印刷機の発明は人類社会に叡知を与えコミュニケーションが豊かになった最初のWorld Wide Webであろう。
Movable metal type(可動式金属文字、活字)はその組み合わせにより、あらゆる文意を表現することは今日のコンピュータ時代のPCと何ら変らない。
ドイツ各地で2000年1月からグーテンベルグの生誕600年を記念するミーティングが開催されているが、出版物は発明された当初の価格に比べて大きくコストダウンされてきた。(図8)
 現在では、インターネットで無料に近い費用で入手可能である。印刷の出荷額は、年々着実に増大傾向にあるが、特に発展途上国での出荷額は著しく増大している。これは、世界的に書物や新聞、雑誌の需要がインターネット上の配布にもかかわらず増大していくことを示していよう。日本における21世紀の印刷産業の出荷額予測は2000年で9兆1千億円から10兆円と予測した。その根拠は出版・印刷・同関連産業が2000年で14兆円から15兆5千億円になることを近似曲線で推定した。その65%の印刷産業の出荷額と考えた。(11)
印刷産業の情報設備投資はめざましいのがあり、デルタルワークフローと大容量の伝送により新しい情報産業への発展と従来まで利用してきた各版式の高度活用によるニュービジネスの展開などが期待される。
 そのためにもグラフィックアーツ学の研究を一層推進しなければならない。
Reference

(1)Akihiro Kinoshita; Proceedings of The Japanese Society of Printing Science and Technology in Seibu Branch 1~15pp(27 July, 2000)
(2)Akihiro Kinoshita; Abstract of the final lecture in Kyusyu Sangyo University (15 March, 2000)
(3)http://www.media-igu.com
(4)Akihiro Kinoshita; Proceedings of International Symposium on the Printing History in East & West in Seoul at 30 September,1997; Proceedings of Chongju International Forum of Printing Cultureat 2 October,1997
(5)Akihiro Kinoshita; Research Reports of Faculty of Arts , Kyusyu Sangyo University145~152pp(1999)
(6)Japanese Economic Statistic 2000(March, 2000)
(7)Akihiro Kinoshita; Web Paper ; http://www.media-igu.com/kinoshita
(8)Akihiro Kinoshita; Research Report of The Japanese Telecommunication Society 467~479(February, 2000)
(9)Akihiro Kinoshita; Motoya and Print (August,2000)
(10)Akihiro Kinoshita; Proceedings of The Japanese Society of Printing Science and Technology in Central Branch 1~15pp(28 July, 2000)
(11)Akihiro Kinoshita; Insatu Sinpou (6 Sepember,1999)

(Received at 20 August, 2000)



Figure Caption
Fig.1 The Advertising Cost Change in Japan
Fig.2 The Publishing ,Printing and Related Industries in Japan
Fig.3 The Graphic Arts Industry in Japan
Fig.4 The Image Retrieval from The Database
Fig.5 drupa2000 Trends
Fig.6 The Digital Printing
Fig.7 The Number of Patent
Fig.8 GDP and Real Print Sales

Table 1 The Print Shipment in The World
Table 2 The Industries of The Prepress and The Press
Table 3 The Population Change in Japan
Table 4 The Gross Domestic Product in Japan
Table 5 The Readability
Table 6 The Print Shipment in Europa
Table 7 The Printing Trends after 5~8 Years
Table 8 Internet Access Cost
Photo 1 百万塔陀羅尼経
Photo 2 drupa 2000 North Entrance
Photo 3 Heidelberg Stand(No.1 Hall)