国際印刷大学校研究報告第3巻刊行に寄せて

客員教授 松久 卓


 世界初の印刷系バーチャル大学の国際印刷大学校は2003年4月に開学4年目を迎え、ここに研究報告第3巻を刊行するに至りました。
その内容は質量とも充実し、教授スタッフからの投稿を中心にしてまとめられています。
巻頭言として自ら印刷会社の経営に携わった田中尚安副理事長が現今の印刷経営者に世代交代に伴う旧体質を指摘し、経営危機に直面し、その再建を果たした日産のカルロス・ゴーン社長の指導力を高く評価しています。
木下堯博学長は「色再現比較として高濃度インキによる印刷画像に関する研究」を発表しました。これはBASFの高濃度インキの印刷画像と日本で初めてこれを使用し三菱重工で印刷した画像はJCP2001をはるか超え色域があり、グラビア印刷を凌ぐ彩度を有することがわかり、高品位印刷として4色で対応出来ることを証明した論文です。
富士精版印刷(株)の淀野温敏氏は4色インキで表現出来ない色彩を7色のパントンインキで表現するHiFiカラープリンティングの製版と印刷についてまとめ、そのための原稿選択、ワークフローの例示されています。このような高品位印刷はクライアント、デザイナーの理解と協力が必要であると指摘しています。
伊藤晴夫客員教授は「デジタルフォトグラフィーに関する研究」は今日、写真の主流になり、印刷分野でも利用が進んできたCCDを中心に、デジタル入力法、画像処理ソフトなど技術規格と用語を解説し、デジタル画像システムの成り立ちと技術展望を詳細にまとめています。
松久 卓客員教授の「ベネツィア共和国の印刷・出版業」はグーテンベルグの活版印刷術の前後についてそれまでの「手作業による写字術」から「機械を使った写字術」へと移行した。その結果、活版印刷が一挙にヨーロッパ各国へ伝播普及した史実を印刷・出版大国となったベネツィア共和国の例からとりあげた論文です。
大阪経済法科大学の鄭 萬佑教授は「金属活字印刷技術の発明、発展における高麗朝、李朝とグーテンベルグの貢献」と題してグーテンベルグの印刷術の発明は高麗朝の金属活字、李朝の組み版技術などが影響を与えたとの結論を諸史料から究明しています。
三浦澄雄客員教授は「印刷産業のカスタマーサービス」と題し、印刷産業では顧客の立場に立って仕事を進めることが基本であることを述べ、社員全員がこれを認識し、顧客本位に徹する体制作りに関し論述しています。
富士写真フイルム(株)印刷システム部の河合英昭氏は「印刷デジタルフローにおけるコミニュケーションとしてのCMS」については印刷条件の把握と色の基準を作り、変動要因を管理・運用手段としてのCMSの活用が大切であると述べ、FFCMSの印刷診断チャート利用の一例がまとめられています。
 これら7編の論文は、印刷を中心とした歴史、教育、科学技術などの学術分野に立脚したもので、印刷界の発展にいささかでも貢献できるものとして貴重なものです。
 巻末には国際印刷大学校の平成14年度活動記録の抜粋などが掲載され、各分野で精力的活動をこなしていることがわかります。
今後の国際印刷大学校のますますの活躍を自負しています。
(2003年4月30日記)